熱海での経済学OB合宿ゼミでの課題図書「人口と日本経済 長寿、イノベーション、経済成長」について

吉川洋「人口と日本経済 長寿、イノベーション、経済成長」2016年

吉川先生の本『本書は、21世紀の日本を考えるときのキーワードとも言える人口 について、経済との関係で考えてみることを目的としている。人間の歴史の総決算とも言える人口は、複雑な現象であり、既存の学問一つでは到底全貌を明らかにすることはできない。本書はあくまでも経済と人口の関係についてのエッセイである。』と、冒頭のはしがきに記している。
しかし、エッセイというのは、随筆とう意味ではなく、学術論文に近い。

しかし、外国では論文もエッセイというらしい。
マルサスの「人口論」も同様の表現を使っている。”An Essay on the Principle of Population”で、これもエッセイである。

さて、本書の内容ですが、以下ように概観しました。

第1章(経済学は人口をいかに考えてきたか)
経済の発展と人口の増減は無関係。過を振り返ると時代とともに経済は発展してきた。「人口減少ペシミズム(悲観 主義)」は、過言である。

第2章(人口減少と日本経済)
経済成長率を決めるのは、人口の伸びより、人口以外の要素が大きい。
たしかに人口減少が経済成長率を下押しするように働くことはある。
しかし、日本の高度成長期の経済成長率への寄与度を分析すると、人口以外の要素が大きい。
すなわち、経済成長率=労働力人口の伸び×労働生産性の伸び、に分解される。
労働生産性の伸びは、資本蓄積×技術進歩(イノベーション)に分解される。
イノベーションは、単に生産技術ではい。
需要を増やす、つまり、消費者が欲しくなるような商品の開発。いわゆる「プロダクト・イノベーション」が重要である。

第3章(長寿という果実)
寿命の伸びを幸福度の指標と考えれば、不平等はかなり改善されたと言える。
我が国では、国民皆保険制度の導入以前は、医者にかかる率(受療率)が年齢とともに低下していた。
また、所得格差と同様に、「寿命」の不平等の推移・国際比較を、ジニ係数で分析したデータでは、大正デモクラシーの時期に、我が国は経済発展しつつも、寿命の不平等は全く改善されていなかった。
それに比べて、現在ではかなり寿命は平等に改善された。

第4章(人間にとって経済とは何か)
そもそも経済成長は望ましいことなのか?
成長不要論を排した上で、GDPという指標には欠点はあるけれども、全く使えないわけでもない。
需要飽和という成長の壁を突破するのは、プロダクト・イノベーションである。「需要飽和の法則」が不況をもたらす。

で、結局のところ要約すると、プロダクト・イノベーションが重要で、人口減少は豊かさには影響ないということ。

でも、このイノベーションをどのように起こすかが鍵で、それが誰でも起こせたら苦労しないわけで、悩ましい。