勧善懲悪的なオチに,まんまとハマった「コーダ あいのうた」

coda

オススメ度:★★★★☆(4.3)
理由:本作はリメイク版で,
舞台を前作の酪農から
漁業に変えたようだ.
ストーリーは至って簡潔.
伏線もなければ,当然回収もない.
勧善懲悪的な,似ているが
ディズニー作品ではない.
現実は
「こんな風にならんだろう」と
思いつつ,もしも,こうなったら,
「いいなぁ」と,思う自分も居る.
結果として,
思い通りの方向に進んでいく.
しかもハマってしまった.

下ネタジョークで,
思わず場内で声を上げて
笑ってしまった.
そんな中でも,
もちろん泣かせる場面も多々ある.
文字通り愛が溢れている
お決まり作品だ.

家族,親子,兄妹.そして同僚.
恋人.そして先生.
悪い人が1人も居ない作品には,
見ていて安心感がある.

コーダ?とはなんだろう?
CODAとはChild Of Deaf Adultの略.
聴覚障がい者の両親を持った子どもを
示す言葉.健聴児を指す.
そして楽曲のコーダ.終結部でもある.

4人家族で,両親と兄がいずれも
聴覚障がい者.家族で唯一
健聴者の女子高生ルビー.
普段高校の傍ら父と兄が漁師で,
その手伝いをしている.
歌が大好きな彼女は,
なんと合唱部顧問の先生に,
その才能を見出される.
そして顧問の先生の指導の元
「バークリー音楽大学」を
目指すことになる.

漁業が家計を支える家庭にあって,
健常者である彼女は
何かと頼りにされる.
特に健聴者への通訳としての
彼女の存在は大きい.

家族のために彼女は,
音大の夢を
諦めざるを得ないという
鉄板シナリオ…

聴覚障がい者の立場から
すれば「無音」の世界だからこそ,
「音」とは身体全体で
音の振動を
肌で感じるもの
なのかもしれない.
だから,
歌っている娘の喉に父は
手を当ててその震えを感じる,

大きな音量にして,
腹の底から突き上げる
感覚で聴く.

スクリーンを通じて,聴覚障がい者が,
一体どんな世界で,音楽を感じているか.
娘の舞台をどんな風に感じているか.
あえて「無音」を本作に取り入れることで,
スクリーン越しに聴覚障がい者の
気持ちに触れることが
できるよう工夫されている.

高校から大学へ.
親は子離れし,
子は親から離れ,
大人へと成長する.
まさに巣立つこと.
それは彼女自身,
そしてその両親と兄の
一つの人生の終結部
かもしれない.

同じ,聴覚障がい者を
扱った作品でも
前回鑑賞した
「無聲 The Silent Forest」とは
180°違う正反対の作品だ.

人を応援したいう気持ち,
家族という存在.
抱きしめたくなるような
この感覚.
大好きは父,母,兄,
そして同僚,恋人.
やぱり人の絆.
魂が震える作品だ.
わかっているシナリオだが,
不覚にも泣けてしまった.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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