百試千改とは諦めない精神力「吟ずる者たち」

吟ずる者たち

オススメ度:★★★★☆(3.8)
理由:これはまさにイノベーションだ.
ここまで何度も失敗してそれでも
「夢を諦めない」というスピリット精神.
そこに感動する.
なんと言っても実話を元に
しているだけに想いが観客の
こちらまで伝わってくる.
うまい西条の酒が呑みたくなった.

明治時代には銘酒といえば,
灘や伏見の酒で,
広島西条酒などは無名.
いや広島では逆に
腐酒が続いていた
時代だったようだ.
その主要因は水.
灘の水が硬水で,
その水は醸造する酒に
適している.しかし広島の水は
軟水だった.
そんな明治時代に
日本で初めて軟水醸造法を
確立し,後に吟醸醸造の父と
呼ばれた人がいる.

広島の三浦仙三郎だ.
日本のウイスキーの
父といわれる竹鶴政孝の
父親・竹鶴敬次郎,
彼もまた広島で酒づくりの
改良に取り組んだ蔵元たちの
メンバーの一人だったという.
三浦は日本で初めて吟醸酒を
つくったのだ.
こうした実話を元に
制作されているだけに,
共感する部分がかなり多い.

本作品はふたつ時代を
行き来する現代と明治時代だ.
まさにパラレルワールドを
形成しているとも言える.
場所は同じ広島県・安芸津.
今でこそ酒蔵と言えば西条.
安芸津は西条からさらに
南に下り瀬戸内海に
面している土地である.
当時の広島での酒造りは,
腐造は天任せ.
そこでどんなに酒蔵を
磨いて清潔にしても,
作った酒は腐造ばかり.
仕方なく場所を変えて,
V字回復を目論んで
銀行に駆けつけても
リターンは期待できない.
そんな生産実績のない
酒蔵には融資など
してくれない.
それでも必死になる三浦仙三郎.

そもそも灘や伏見と
広島とは水が違う.
ミネラルが豊富な硬水に
比べて,軟水はミネラルが
豊富ではないらしい.
だから温度管理をして,
麹をじっくり,ゆっくりと
成長させる低温醸造法を
見出した三浦仙三郎は
「百回試し、千回改める」
としている.『百試千改』

まさに三浦仙三郎の精神力.
家族には決して恵まれて
いるとは言えず,
それでも必至に頑張って
いく姿は心打たれる.
せっかく自身で調べ上げた
技術を他人に惜しむことなく
広げる.そのかいがあって
見事に広島県の酒蔵が
全国清酒品評会で
灘や伏見を破り一位に
輝くまでの酒が出来上がっていく.

前半部分は,
展開がスローペースだったが,
徐々に加速.中盤からは,
三浦仙三郎の生き様が実に
実直で素晴らしい人物.
あそこまで愚直に何故を
追求するあの諦めない精神は
どこから湧いてくるものなのか.
勇気をもらった気がする.

投稿者プロフィール

天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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