冷静な判断ができない従軍医師の異常な心理を描く「リフレクション」

リフレクション

オススメ度:★★★☆☆(3.4)
理由:そもそもReflectionとは,
何を示すのか.従軍医師として
捕虜となった過去を振り返る
ことなのか.一体何を内省したのか.
する必要があるのか.

従軍医師として
ウクライナ東部の戦場に
向かう途中彼は,
ドネツク人民共和国に
不法侵入したとされ,ロシア軍に
拘束される.

ロシア軍に捕まり,極悪な環境の
収容所で捕虜として拷問にあうも,
捕虜交換の機会を得て,
なんとかキーウに戻ることができた.

捕虜から帰還後,
彼の家族が生活するキーウの
高層マンション.
透き通った窓に激突した鳩.
娘の落馬による骨折.
トイドローンを欲しがる子ども.
ジョギング中に野犬に襲われる
という事件.それらは一体何を
意味するのか.

果たして「魂の回復」というのは
達成できるのか.
現実はそんなに簡単ではない.

ウクライナ作品.
2014年に始まったロシアによる
クリミア併合.2022年の前から
ウクライナ東部では戦争は
すでに続いていたんだろう.

ウクライナ東部でロシアの
捕虜となった従軍医師.
彼はキーウに戻ってから
ようやく元家族と再開し,
普段の生活に戻っていく.

PTSDに苦しむ毎日を
如何に過ごすか.恐らくロシアにも
同様の人たちが居るに違いない.

作品に戻ると,複雑なのは従軍医師の
彼の周囲の人間関係だ.
元妻.そして愛娘.そこに元妻の
再婚相手.結局,拷問を受け,
瀕死の彼にトドメを刺したのは
従軍医師.

戦争という狂気の心理状態では,
何が正義で道徳なのか不明だ.
本当に彼のために,
トドメを刺したのか.
自分の周辺環境の担保のために
行った行為なのか.
私利私欲の結果ではないのか.

ニュートラルにキープできない
戦争という状況は恐怖でしかない.
マズローの第二の欲求,
いや第一の欲求すら危うい.
生理的欲求も安全の欲求も
侵されていく恐怖.

しかし本作は,
誤解のないように
観なくてはいけない.
創作!ということだ.
とてもリアルなので,
フィクションではあるが,
フィクションに
見えないところが,
危うい気もする.

トリガを引いたロシアは
確かに非があるのだが,
あくまでニュートラルで
史観した方が良いかも
しれない.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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