号泣した,まさに力作,60年ぶりの映画化島崎藤村の「破戒」

破戒(1)

オススメ度:★★★★☆(4.0)
理由:「我は穢多なり.されど穢多を恥じず
骨太な作品であり,かつ,純朴な作品でもある.
だから少しぐらいリアリティに
欠ける点もあるかもしれない.
それでも,それ以上に心に突き刺さる.
それは何か.この理不尽な差別に対して,
主人公のように真っ直ぐ
愚直に生きることに感銘を受ける.

社会が創った戒めを破る.
だから「破戒」なのだ.

士農工商のその下に
穢多・非人を創った徳川幕府.
同和問題は今も存在するのだろうか.
教育とは平等に与えられる権利.
こんなに重いテーマを島崎藤村が
当時鋭く刳ったのは凄い.

原作では海外にその活路を見出すが,
本作では国内に留まり,さらに
教職の道を東京で探すという.

当時からすれば,海外に希望を
見出すほうが現実的ではあるが,
2022年の今,国内に留まり
諦めない姿勢もまた大事のような
気もする.

身元を明かさず,一生嘘を突き通せば,
なんとかなったかもしれないのに,
それがまた,部落から出ていく時の
父親の遺言のような贈る言葉だった.
それを,その掟を破ってまでして,
あえて世間に暴露し,
自らが窮地に立つ.
人として正しいことをする.
その一途さ.
恋愛.友情も一筋
走っている.

言論弾圧.
気に入らない奴が居たら,
暗殺する.まさにテロ行為だ.

本作を鑑賞した後,
木下恵介監督,市川崑監督
双方の作品についても
鑑賞したくなった.

島崎藤村の名作「破戒」は,
1948年には木下恵介監督が,
1962年には市川崑監督が
映画化した.
2022年には前田和男が映画化.
実に60年振りの作品.

純朴な役の石井杏奈,
そして主役の間宮祥太朗の
演技に圧倒された.

政治家であり,思想家である
猪子は穢多と言う事を隠さずに
生きてける.
他方,いち尋常小学校教師である
主人公はそこまで自分をさらけ
出して,正直に生きてはいけない.
身の上である.それは
すべての築き上げたものが
崩れていくからだ.
銀之助の純粋に
瀬川を按じる気持ちが心打たれる.
そして,素直な尋常小学校の生徒たち.

親が士族出身というのが
一体何になるのか.

今を生きるのに過去の名誉は
必要なのか.

確かに先祖を敬うことは必要だ.
それは,先祖があってこその
今だからだ.

今こそ,
思い込みや刷り込まれた過去の
プログラミングを解放することが
求められている.

結婚や就職にも影響があった
とされる同和問題.

江戸時代からの制度が,
明治維新を経て帝国・ファジズム主義と
終戦.そして民主化となった今でも,
なんらかの形で差別が残っている.

環境が変わらないなら,
猪子のように自ら変えていくしか
方法がないのか,
いや,まだ方法は沢山ありそうだ.
方法は100万通りあるはずだ.

破戒(2)

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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