オススメ度:★★★★☆(3.8)
理由:本作品は単にサスペンス・ホラー映画
という話題作ではない.ちょっと複雑な作品だ.
魂・スピリチュアルの世界が垣間見れる.
死生観と輪廻転生.東洋思想そのものだ.
この構成は素晴らしい.
魂の世界は,人が魂を宿して
年齢を重ねていく.逆に遡れば,
赤ちゃん返りする.精神科医.
パラレルワールドの世界.輪廻転生の世界だ.
魂は輪廻転生で,獣で生まれ変わったり,
人に生まれ変わったりする.
そして肉体と魂の存在.
家で飼われていたウサギには
そんな意味があったんだ.
家族愛が強すぎると,家族が不幸に
陥った時には,逆にここまで,
家族を追い込むような異常な
業に走ることができるものなのか.
一体家族愛とは,その名を借りた
エゴではないか.
この家族の秘密,母親,妹.
万引き家族ならぬ疑似家族.
これは父のエゴではないか.
ホラー映画でありながら,
次々と血生臭いシーンが少なく,
大音響で驚かすこともなく,
じっくりと真綿で首を締めるような感覚だ.
原作はTSUTAYAのコンテストで
2017年に準グランプリを受賞した作品.
それを監督が脚色した作品.
無駄な部分がなく,凝縮されたまさに
映画作品だ.
ただし,ツッコミどころは,
ないわけではない.
ことの重大性を知って何故警察とか
第三者に相談しないのか.
叔母は甥の症状の原因を如何に知ったのか.
などなど,そうはしないだろうなど,
まあ多少の疑問はあろうが,
それ以上に輪廻転生と
この魂の世界を描写する具現化に脱帽.
まあまあ胡散臭いが退行催眠を
うまく輪廻転生に結びつける
あたりは流石だ.
そもそも,死後,
人間に生まれ変わるという
転生論を前提とする前世療法は,
退行催眠により患者の記憶を
本人の出産以前まで誘導し
過去生退行させるという療法で,
確かに心的外傷等を取り除くと
主張されている.
ただし,前世の記憶は過誤記憶,
虚偽記憶の一種であるという批判も
あるのは確かだ.
いずれにしても,
原作の目の付け所は悪くない.
心理療法の診療所を営む父.主人公の花は
「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」
の南沙良.ピッタリはまり役でした.
そして何と言っても
父役の玉木宏の二人の演技が凄い.
不幸にも一家は交通事故に遭い,
父は下肢に障害を残し,
母は直物状態で一方妹は顔に重度の火傷.
無傷の花は心に深い傷を負う.
そんなある日,
奇跡的に母親が意識を取り戻し
退院したという.喜びも束の間,
花には何か疑問が次第に湧いてくるのだ.
ちょっと展開が拙速であったものの,
発想は実に面白かった.
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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