これは凄かった「すずめの戸締まり」

戸締まり1

オススメ度:★★★★(4.8)
理由:今年は2回観たいような作品がなかったが,
ようやく出会うことができた.
これはもう一度観たいと思わせる作品だ.
陽はまた昇る.
どんな辛いことが襲っても,
辛いことは忘れられない.
良い思い出にはならない.
未だうなされることもあろう.
それでも日は昇る.陰と陽は繰り返される.

「戸締まり」とは,二度と傷つきたくない
自分との対峙ではなかったか.
自分にケジメをつける.
あの世とこの世.そして過去の現在.
まさにパラレルワールドの世界観だ.

潜在意識と顕在意識.過去の私,
それは高校生の岩戸鈴芽(すずめ)の
潜在意識の中にあった.
パラレルワールドとは
現在と3.11の大震災にあったのだ.
岩戸鈴芽.彼女は宮崎の女子高生.
天岩戸.鈴芽は天鈿女命(あめのうずめ)の
意味づけであろう.

過去の震災.関東大震災,阪神大震災,
東北大震災.亡くなった人たちには,
思い出が溢れているはずだ.
震災で破壊されたものだけでなく,
過疎地で廃校になった校舎.
不況により廃墟となった街並や遊園地.
しかしそこには当時の賑やかだった
それぞれ個人個人に思い.思い出がある.

これまでの育ての親,
12年の多くの思いをぶちまける叔母.
そして娘同様の「鈴芽」との二人暮らし.
言いたいことを互いにすべて吐く.
それが全ての感情ではない.
生きるとは,必ずしもポジティブな
感情だけではなく,ネガティブな,
そしてダークな気持ちが全くない訳では無い.
誰もが少なからず持っているマイナスの感情.
それを,その思いを内に秘めずに相手に,
これまでの悶々と思いを
ぶちまけることも必要だ.
そして最後に
「ありがとう」「ごめんなさい」が
言えるかどうかという,
最もシンプルな言霊の重さだ.

第二チャクラは
インナーチャイルドとセクシャリティ.
幼い頃に封じ込めた二度と
傷つきたくない思いとは何か.
潜在意識に書き込んだものとは何か.

過去の記録を書き込む.
プログラミングされ,
傷つくのが怖いから蓋をする.
触れないようにする.
潜在意識は無意識の世界.
過去に刺さったトラウマ.
3.11の震災で失くした母親.

天災,地球と共に生きるためには
避けて通れない.それでも日は昇る.
絶望の淵にあっても,笑える日が来るものだ

要石の存在は,とても神秘的だ.
扇の要のように,地球も運命もまた
何かに守られているのかもしれません.

東北の風景は見る人によっては,
震災を体験していない人からは
美しく見えるかもしれない.
でも体験した人にとっては
忌まわしい過去を思い出させる
景色でしかないかもしれない.

消し去りたい思い出.
その中に本当は隠れている真我.
人には決して
忘れてはいけないこともあろう.
それは,辛さと無理に向き合うのではない.
むしろ,ブレーキとアクセルを
両方踏むことではなく,
自己を認める.許容する.
許してから前に進むことなのだ.
ホント良い作品でした.

戸締まり2

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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