「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」は、今から5~6年ほど前のウェブマガジ『ぽこぽこ』に連載された押見修造の漫画が原作である。
これほど琴線に触れる映画は暫くなかった。映画館から地下鉄駅まで、嗚咽が出るほど、思い切り泣いた。
物語は吃音の女子高生と音痴の女子高生、そして空気の読めない男子高生。ほぼ3人で繰り広げられる。中でも大島志乃を演じた南沙良の演技が素晴らしい。鏡の前で繰り返して自己紹介の練習をする。しかし、クラスでは言えない。
なぜ、これほどまでに感情移入できたのか。思い当たる節がある。
あれはいつのころだったのだろうか。中学の頃、吃音や音痴の同級生を馬鹿にし、そして蔑んでいた、そんな自分が昔居た。あの時のこと、あの時の嫌がらせ、汚い言葉が再び蘇ってきた。
「なんで、あんなこと言ったんだろう。」「なんで、あの時、優しくできなかったんだろう。」
自分より何が劣っているところを見つけては、面白おかしく、からかう、馬鹿にする。
そんな過去が鮮やかに、まるで昨日のことのように蘇る。
ちょうど、みぞおちあたりに矢が刺さったように痛い、そして苦しい。あの時いじめてバカにしたことの後悔と罪の深さ。なんてことをしたんだという気持ち。
一生懸命に生きている、その生き方をむしろ、応援するべきだったのに、一緒になって集団で嫌がることを言ったり。そんな最低な自分に対峙することができた。
映画のエンドロールの時から胸が張り裂けそうなこの感覚。
だれしも、何かしらの欠点を持っている。悩みや苦しみを抱いている。その中で懸命に生きている。そこに理解してくれる友達の存在、寄り添ってくれるだけでいい。
自分の使命を考える時、このトラウマ。この映画から感じ取ったこと。歳月を無駄に重ね、人生の後半に差しかかってきた今、人の役に立つような人生を、そして、そういう人を応援するために、救うために生きるたいものだ。
久しぶりに琴線に触れる映画だった。
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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