雫井脩介「検察側の罪人」。なかなか面白かった。
知人で最近になってから司法修習の話を聴いたこともあり、冒頭の研修というのはこんな感じなのかな、と感じさせられた。
司法に携わるものは、定量的なデータによってその是非を判断すべきであるから、当然感情を抑えて客観的に判断することが理想なんだろうけど、やはりそこは人。
人の感情を止めることはできない。すべてを抑えることも難しい。
この作品は「時効」という「時効制度」そのものをテーマだけに、本当に時効というのは必要なものなのだろうか。そう思ってします。これまで弁護側を題材にした作品が多い中、それだけに検事を作品が新鮮でした。司法制度の問題点を描いた作品かも知れませんね。
冤罪、政治問題、時効と、いろいろな要素を織り込んである作品です。
特にあのウ号作戦ことインパール作戦。
インパール作戦とは、インド北東部の都市インパール攻略を目指した作戦のこと。作戦に参加した殆どの日本兵が死亡した史上最悪の作戦。これも作品に登場する。
インパール作戦の牟田口中将と矢島 健一演ずる高島進が重なって映し出される。
補給線を絶たれてしまうあたりは「銀英伝」(銀貨英雄伝説)の自由惑星同盟軍がイゼルローン攻略に成功したことから無謀にも進攻した「死線」にも似ている。
あの「白骨街道」まで取り上げている点が、この作品に深みを与えている。
キムタク演ずる最上毅、ニノが演じる沖野啓一郎もなかなかいい。
でもそれにも増して良かったのが、吉高由里子演じる橘沙穂だ。
あの、歯切れのよい、真っ直ぐな心が気持ちいい。
もちろん、沖野は真っ直ぐではあるが、歯切れは悪い。(笑)
最上は事実を曲げてまで真実を求めていく気持ち、別な意味で純粋かも知れません。
どちらの検事も好きですが、どちらかと言えば、最上の方に共感を持ってしまう。
酒向芳演ずる松倉重生。「あんな奴生かしておいてはいかん」その気持ちは判る。
法の下では無罪なのである。正しいことが良いこととは限らない。
映画では全てが表現できなかったかも知れませんが、なかなか奥の深い映画でした。
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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