オススメ度:★★★☆☆(3.6)
理由:人生の「黄昏」とは,
実はそれはひょっとしたら「希望」
なのかもしれない.孫娘の
素直な行動,仕草,言葉に
救われます.
高齢者になれば身近になる
死の存在.そして孤独感.
決して避けることができない老い.
エンドロールの
最後まで見逃せません.
若竹千佐子著同名小説.
彼女は63歳で作家デビュー,
芥川龍之介賞・文藝賞受賞の
ベストセラーの映画化です.
実体験を元にした小説だけに,
気持ちが込められている.
共感する部分も大変多い.
ひとり暮らしの老女
桃子さんは75歳.
夫に先立たれ、
独居生活を送る日々.
年金暮らしの独居生活の
高齢者は,恐らくこうした
暮らしをしてるように思う.
たしかに朝早くから
図書館に行くと,
決まって同じ
顔ぶれの高齢者と
遇うことがある.
桃子さんの借りる本は,
地球誕生から本だ.
生命に大変興味があり,
それらをまとめた彼女の
ノートが凄い.
歳を重ねると「宇宙の真理」を
追求するような出来事の日々.
脳内で,別の人格と会話をし始める.
いや,頭の思考が現実化されるのだろう.
なんとも不可思議な世界.
日常生活との混同だ.
それは決して,
認知症が原因でくるものではない.
昔の事を思い出すこと,
夫との馴れ初め.
歳を重ねて行くうちに,
社会からの疎外感.
かかりつけ医の通院.
図書館の往復が日課となる日々.
孤独を感じると
人はどうなるのか.
よく趣味を持ちなさい…
なんて簡単に言われる
こともあるが,
そうした社会との
つながりも大事だとは思う.
社会との繋がるには,
常に人のことを
考えなければならない.
何もかも自由には,
ならないのだ.
だから,
愛より自由が大切だと
言った桃子さん….
ひょっとしたら,
人は孤独の中に
自由を感じる
のかもしれない.
桃子さんが時折,
独居を少し楽しんでいる
ようにも見えるから不思議だ.
疎外感は,
結局は自身の考え方次第.
音信不通の息子.
たまに会いにくると
思えば,お金を貸してほしい
時だけの娘.
しかし,小学生の孫娘は
一人で桃子さんに
逢いたいと思って,
バスを乗り継いで来る事を
考えれば,まんざら桃子さんも
一人ぼっちではなさそうだ.
息子と同級生の親切なお巡りさん.
図書館の受付のおばさん.
頭の中の同居人.
おらおら3人トリオの
青木崇高、濱田岳、宮藤官九郎.
そして,
起きてもすることないから,
寝ておけ!という六角精児の
言葉も共感する.
若い時の桃子さん役が
蒼井優なので,
先月観た「スパイの妻」
とも重なる.
毎日の生活.
絶対にしなければならないことが
なくった時,
それが疎外感になるのだろうか.
自由を手にすると,
そこから逃避して
縛られたくなるのだろうか.
誰からも束縛されず,
自由にしたいことが
できる時間,
それは返って不自由なのか.
誰のために生きてきたのか,
それは人の為なのだろうか.
やはり自分の魂が喜ぶことを
すべきではないだろうか.
そんなことを考えさせられる作品だ.
人生は機織りのごとく,
紡いでいく.
全てに無駄は無いように思える.
日常の何気ない生活ほど,
貴重なものはない.
幸せというのは,
後でわかるものではないか.
悔いのない人生のために
考える作品だ.
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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