オススメ度:★★★★☆(4.4)
理由:原作は「マチネの終わりに」の平野啓一郎.
これは骨太作品だ.確かに親ガチャは存在する.
ガチャ玉を変える.なかったことにする.
「どこの馬の骨とも解らない男に娘を嫁がせられるか」
というセリフを思い出す.
差別なのか.過去を消したいのか.
果たして偽りの戸籍というのは,
その生活の全てが嘘なのか.
本心は何処にあるのか.
結局翻弄されて馬鹿を観たのか.
考えさせられることが多い.
見応えのある作品,この脱力感は只事ではない.
これまでの過去の自分を消し去りたい思い.
自我と真我.顕在意識の自分を自我とすれば,
潜在意識の本当の自分は真我.
自己形成に影響を及ぼすのは
DNAなのか.それとも環境なのか.
今の自分を打ち消したい人は
少なくないかもしれない.
人生をふりだしに戻したい,そんな思い.
過去のトラウマ.
プログラミング.
思い込み….
本当の自分の姿を
見失うことがあるかも
しれない.
一体本当の自分は何処にあるのか.
一掃して誰も知らない土地に旅立ち,
名を変えて,もう一度生きたい.
その気持ちを考えると複雑だ.
過去の呪縛から解放されなくても,
たとえ出所がどこにあっても,
自分事として変えることは
できなかったのか.
吐くほど自己の存在を
許すことができない自分.
そんな自分の存在.嫌になる.
そんな人は一人二人ではない.
だから,互いに変わりたい人が
戸籍を交換することも
成立し可能かもしれない.
もう一人の自分とは,
パラレルワールドの自分の世界,
パラレルワールドは過去と現在,
そして未来.あるいは他の地域.
それを3次元の世界で同時に行う.
そしてシュールな作品だけに,
シュルレアリムのルネ・マグリットの絵画.
「複製禁止」
「複製禁止」は鏡の前に立っているが,
ボードの上に置かれている
エドガー・アラン・ポーの本は
正しく鏡に反映しているのに対して,
男性は鏡に反映されずに
後ろ向きのままの,
ありえない非現実を表現している.
まさに本作品の内容にピッタリ.
あのルネ・マグリットの
不思議な絵の魅力も加わり,
死刑囚の作品も印象的だ.
世の中差別は無くなることはないだろう.
その差別から逃げるために全部塗り替えたい.
できれば顔も整形したいと願う.
そして人生をやり直す.
妻夫木聡,窪田正孝,安藤サクラ…
素晴らしい演技だった.
そして忘れてならないのが,
戸籍詐欺で服役中の柄本明.
まるで「羊たちの沈黙」の
アンソニー・ホプキンス,
レクター博士のようだった.
年末には
いい作品が揃って過ぎている.
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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