「バーニング 劇場版」観ました

バーニングエンドロールを観ながら、なんだこの悶々としたこの感覚は。これも映画の醍醐味だ。「作品を観て自分でミステリーを説いてね」と言いたげない作品である。この作品は、村上春樹の短編小説「納屋を焼く」が原作の韓国映画。エンドロールにはNHKの文字が…。昨年暮れに短縮版が放送されたらしい。だからタイトルが劇場版なんだ。納得です。登場人物ほぼ3人。登場人物が少ないほうが感情移入しやすいし、判りやすいと思う。主人公のイ・ジョンス、彼は小説家を目指している貧乏青年。そして、幼馴染のヘミ。そしてそこに現れた謎のセレブな美青年ベン。彼は愛車ポルシェを乗り、ソウルで裕福な暮らし。

主人公のベンの生き様を見ていると、両親の血のつながり、DNAを感じる。父親の頑固で不器用な性格。自分はそういう生き方はしないと決めながら、気づけばそういう思考に走るのか。なんともDNAというのは、切っても切り離せないものなのだろう。
偶然に数年ぶりに再会した二人が激しく惹かれあう。ヘミにとっては、ジュンスは唯一無二の存在なのかも知れない。
一方ベンには謎が多い。ソウルのトレーニングジムに通いか身体を鍛える、セレブな男女を自宅に招いたりするパーティ。トイレには数多くの女性化粧品。そして趣味は大麻を吸うことと、もう一つが放火。古いビニールハウスに灯油をかけて放火すること。
放火すると、そこに存在していたものが一瞬にして消え、そこにあった存在も忘れ去られるほど跡形もなくなるという。それが快感なのだと。ビニールハウスはこの国の美観を冒している、だから綺麗にするのだ、という。

そんな時、ヘミが突然失踪してしまう。なんの連絡もなしに。ベンはヘミとは、アフリカ旅行で偶然に知り合いっただけ。ベンにはヘミが蒸発したことなど、全く無関心で、いつものセレブな生活をしている。

ベンに対する嫉妬に似た感覚。そして疑惑。想像がどんどん膨らんでいく。一人で悶々と考え抜く。怪しさがますます高まっていくベン。加えてジョンスの一人ぐらしの背景で、つけっぱなしのTVから流れているトランプ大統領のニュース、そして山の向こうからは大音量スピーカーの音。きな臭い空気感が一層、ヘミの死を想像させる。
ジョンスの想像は膨らみ、と同時に観ている観客だった私も主人公と同じ思考にハマっていく。巧すぎるわ。この映画の作り方。「カメラを止めるな」「おとなの事情」と似た感覚。

思わず、原作「納屋を焼く」収められている「螢・納屋を焼く・その他の短編 」(新潮文庫1987年)を注文してしまいました。世界には同時に全く正反対のものが存在する。

猫、井戸、トイレの女性化粧品、女性の時計…。ビニールハウス、とにかく謎が多くて
もう一度観たくなる映画です。2時間半は確かに長いが、このクライマックスのために用意されたものだったのとは。素晴らしい作品です。★★★★★バーニング2

投稿者プロフィール

天雨 徹
天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」
ブログでは日々の気づきを中心に書いている。
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