1994年にタイムスリップ,懐かしい記憶が蘇る「はちどり」

はちどり1

オススメ度:★★★★☆(4.2)
理由:これはタイムスリップした感覚.
スクリーンに惹き込まれる感覚だ.
当時の自分が重なる.しかし,それでいてグイグイと
引っ張られる感覚ではなく,徐々に波が押し寄せてくる
感覚だ.登場人物に悪役は誰一人いない.
そうした時代だったことを感じる.それがまた重い.
一瞬先は闇.精一杯生きようと思える,
そんな作品です.是非御覧ください.超オススメです.
思わず『はちどり』のパンフレットを購入.
大林監督の遺作『海辺の映画館―キネマの玉手箱』
と同様,後で深く知るために是非購入した方が
いいと思う.

はちどり3

何度も知らないうちに涙…
この涙は悲しい時の涙ではない,
超不思議な感覚だ.

今から二十数年前の韓国・ソウル.
ソウルの聖水大橋崩落のあった年.
1994年当時が舞台の作品である.
当時の韓国の政治情勢,
社会情勢を感じなら見ると,
さらに深みを増す作品に違いない.
ちょうど90年代の韓国といえば,
88年のソウル五輪が終わり,
政治では,軍事政権から文民政権へと
転換した時代だった.
しかし韓国社会は.旧態依然の思想も
当然残っていただろうし,
家族に目を向けると,
封建的な家長制度.父に権限が,
男性に権限があったように思う.
男尊女卑のような時代だったようだ.
一方,当時の経済に目を向けると,
韓国経済は拡張の一途をたどり,
それが加熱し,通貨危機を発生
させた時代でもある.
こうした時代.,成長する過程においては,
痛みを伴う,犠牲を伴うものだ.
そういう意味では「成長痛」の時代だった
のかもしれません.
農民の土地の強制立ち退き.都市化.

受験戦争にも一層拍車がかかった時代.

そして,
1994年10月21日に発生した,
この橋の崩落は,幹線道路が崩落し,
多くの人が巻き込まれ,
死者34名という大事故となった.

事故後の調査では手抜き工事があったという.
そして行政の管理体制も杜撰なものだったらしい.
そして北朝鮮の金日成が亡くなった年も
94年である.

そんな時代背景の中,
テチ洞の集合団地に暮らす
14歳の女子中学生ウニがヒロイン.

ちょうど中学生と言えば,
勉強はソコソコで,異性に興味があったり,
友達関係で悩んだりする微妙な年頃だ.
そんな彼女は,両親,兄と姉がいる.
兄は家族に隠れて,ウニを殴る.
親に期待されているストレスを
ウニに暴力を振るうことで解消している.
そのことをウニは家族にもだれにも言えない.
一方,姉は自己肯定感が低く,
夜遊びへと繰り広げる.
ポケベル….数字の羅列.暗号のよう.
あったあったポケベル.懐かしい時代だ.

そこそこ成績の良い兄は
特に父親から名門大学へ入るように
期待されている.

ただ父の関心はそれだけで,
特に両親は共に小さなお餅屋さんを
営んでいるためか,
子どもたち3人のことを
構ってやれる余裕なんかは
ますでないのだ.

そんな彼女も,漢文の塾に通う
女性教師には心を開いていく.

ところで,
彼女の住んでいるテチ洞という地区は,
韓国市内でも有数の私教育に
力を入れている土地柄だったという.
だから団地住まいでも
塾に通っていたんだろう.

退屈な学校.微妙な時期.
その成長過程にあって,
影響力のある友人だったり,
後輩だったり,そして,塾の先生だったり…

周囲を見渡せば,本当の友達ではなく,
単なる知り合い,
知人に過ぎないと気づくことがある.
気づくと一人ぼっちに気がつくことがある.

心を打ち明けて話せる人が
周囲にいるかどうか.
両親,兄姉,同級生,後輩…
そんな悩み.妙に共感する.

今でこそ,暴力を振るう先生も居ないが,
当時は,ビンタはじめ体罰は当たり前の時代.
理不尽な仕打ちや言動も共感できる.

忘れかけていた子どもの時に
受けた理不尽や耐えてきたこと思い出される.
歳とともに消え去った,
あるいは潜在意識へと隠れたものが
思い出される瞬間でもある.

それでも,社会でイケナイことも,
少し親に黙ってやってみたい,悪いことも….
そうした彼女の行動も,
昔したこと,
苦い思い出がよみがえってくる.

「はちどり」とは,
ウィキペディアで調べると,
キューバに生息するマメハチドリで,
世界最小の鳥であり,
全長6cm,体重2g弱だそうだ.
小さい象徴としてのタイトルにも惹かれる.

はちどり2

投稿者プロフィール

天雨 徹
天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」
ブログでは日々の気づきを中心に書いている。
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