オススメ度:★★★☆☆(3.8)
理由:実話に基づく作品は迫力がある.
2018年の「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」
にはやや見劣りする.もう少し脚本が面白く描ければ
もっと良い作品になったっように思える.
キャサリン.ガン役のキーラ・ナイトレイの演技が
最高でした.
でっちあげの戦争で,イラク国民だけでなく,
英米国人も亡くなっているって考えると,
政治とはなんとも虚しいと感じざるを得ない.
「キャサリン・ガン事件」
英政府通信本部(GCHQ)の情報部員だった
キャサリン・ガンが,2003年のイラク侵攻前の
米国家安全保障局の不法な動きに関する情報を
メディアにリークした.キャサリンは,その件で,
国家機密漏洩で逮捕され,裁判で国と争った.
国の不正に対して,平和の信念を貫き通した彼女は凄い.
米英両国は当時,国連の安保理でイラクに対する
軍事制裁を決議しようとして,裏で非常任理事国
からも賛成票を集めるべく,非常任理事国の動向を
把握しようと通信を傍受して裏工作しようとしたのだ.
それを知ったキャサリンは報道機関にリークする.
あらためてイラク戦争のでっち上げで,
尊い命が奪われた.愚行で野蛮な戦争だった.
確かにフセイン政権が良いとは思わないが,
でっち上げの武力行使は如何なものか.
ブレア首相とブッシュ大統領の思惑.
当時,大量破壊兵器をサダム・フセインが
持っているとして,米国は次々と制裁を課して
イラクを孤立させて,フセイン政権の転覆を
図った政治的戦争.
あの裁判で耐えられたのは,
正義に実直な豪腕弁護士団.
そして,報道をきちんとした裏付けを
取って国民に知らしめた新聞社.
社会の良識の目があったことだ.
そしてなによりも,民主主義.
国家よりも個人を,三権分立が成り立っている.
一般市民も世論が分かれる.
国家の裏切り者とする人たちと,
正しい選択をしたとする人たち.
そして何よりも,
もともと政府は情報漏洩者に対する制裁を
課すということで,起訴に踏み切ったもの.
そうした裁判劇と,
その裏で進行する政治過程が面白い.
国家としては,リークした情報漏洩者を
見せしめに罰したいのだ.
あらゆる権力を使って個人に襲いかかる時
の恐怖.
一方,弁護側は,参考人で政府の要人を
裁判所へ引きずり出す.
国家の不正を明らかにする構えだ.
本来は,英国の諜報機関(GCHQ)に
務めるキャサリンは,盗聴通話の翻訳・
レポート作成をする公務員だ.
もちろん,そこで知り得たことを
口外しないことは百も承知.
しかし,彼女の一言がしびれる.
「私は政府・政権に仕えているのではない。国民に仕えている」と.
自らの保身のため,あるいは守りたい組織のためにと,
嘘で嘘を固める捕まった政治家に見てもらいたい作品だ.
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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