「幸せ」とは富と名声?その結末とは…「マーティン・エデン」

マーティン・エデン

オススメ度:★★★★☆(4.0)
理由:多くの作品を観ることで,
観て良かったと思えるのは,
一つには「スカッと爽やかになること」,
2つ目には,「作品からの問に対して
考えさせられること」だと思う.
本作品は後者だ.
「幸せ」とは何か.知れば知るほど,
純粋な部分が染められていく.
なかなか考えさせれる作品だ.

人の心は何をしても
満たされることはないのか.
どうしたら満たされるのか.
限られた時間の中で
何を残せば良いのか.

原作はジャック・ロンドンの小説
『マーティン・エデン』.
ジャック・ロンドンの
自伝的作品らしい.
彼の映画化された作品は,
ハリソン・フォードの主演の
「野性の呼び声」.

原作ではアメリカ西海岸
であったが脚本により舞台が
アメリカからイタリアになっている.
しかし,そのヨーロッパ・ナポリの
風景が歴史を感じることができて,
とても美しい.

生まれながらに貧しい家庭で
育ったマーティンは,
縁があって人助けから,
上流階級の女性エレナに出会う.
そして自身の惹かれた叙情詩や小説.
書くこと目覚めて独学で勉強をする.

作家として何度も失敗しながらも,
やがて夢を叶えていく.しかし,
夢を叶えても幸せになるとは限らない.
そうした虚しさ.
忙しく成功した彼には,
なぜか空虚が垣間見える.

何やら「蟹工船」のような
階級闘争のようにも見えたりする.
しかし,怒りだけではない.

一体「幸せ」とは何だろうか?
エゴとか自我を通し切ることが,
逆に不幸になる.
でもそれに気づくのは
失敗した時だということだと思う.

恐らく人が羨むような物凄く
「幸せ」は,自分自身では気づかない.
自分には見えないのかも知れない.
「ありがとう」と感謝すれば,
それで幸せなのではないか.

我武者羅に目標に,
夢に向かって行く姿.
マーティンは作家,
そして,好きなエレナとの恋愛が目標.
それがことごとく却下,そして反対.
でも,そんな困難に立ち向かって行く
姿こそ,本当は「幸せ」ではないか.
その姿こそが美しい.

他方,富や名誉を手にし,
一躍有名人となって,
大きなお屋敷に住み,
お手伝いも雇うようになると,
なんだか「輝き」がなくなり,
ワクワク感というよりも
その日の仕事に追われて
いるようにも見えた.

人を出会うことで目標ができ,
突き進んで行く.

しかし目標が達成された後は,
人と出会うことを避け,
輝きを失っていく,
その姿はまさに反面教師なのだ.

原作者が過去を振り返るから
描けた作品で,そういう意味では
「劇場」もそうした後悔の念というか,
苦い思い出を振り返ることで,
人としての味わいが
湧いてくるのではないか.

恋愛とは,
すべてが分かり合うことはない.
恐らく相手をある程度「許す」
ことからはじまるようにも思える.
結局は我を通せば,それはエゴになり,
どんなに自由を与えられても,
一人ぼっちは寂しい.

エデンにとって「エデンの園」は,
希望に満ちたところでは
無かったようにも思え,なとも皮肉である.

原作者のジャック・ロンドンも
ベストセラー作家となってから
自殺していることから,
心が揺さぶられる作品だった.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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