ISに誘拐されたデンマーク人ダニエルの実話「ある人質 生還までの398日」

オススメ度:★★★★☆(4.0)
理由:そもそも危険なところに行くなよ…
っていう簡単なことではない.
家族,政府,人質との交流.
テロリストの立場.
憎悪と日常の平穏.
さまざまなことを
考えさせられる…
中身が詰まっている.
タイトルどおり,
日常生活からどうして
人質として誘拐されるのか.
そして,
どうやって解放されたのか.
その間を描いてる作品だ.

ダニエルがISに誘拐された!
デンマークの実話を
基にしたものだ.
その拘束は13か月にも及ぶ.

デンマークを代表するような
元体操選手ダニエル・リュー.
ケガでその道を絶たれて
写真家に.
そして内戦のさなかの
日常風景を記録する
ダニエル.
そんな彼がシリアへ.
彼は戦闘地域の最前線を
取材するわけではない.

あくまで非戦闘地域の取材.
身の安全を考えた取材だった.

しかしそんな彼が
ISに誘拐され監禁拷問を受けることに.
破格な身代金の要求.
それに奔走する家族.
政府はテロリストとの
人質交渉には一切応じない.
だから当然支援もしない.
八方塞がりの状態だ.
人質救出の民間の専門家が
存在する.
ビジネスとはいえ
彼らも命がけだろう.

監禁中の人質たちとの交流.
監禁部屋では
プレイベートもなく,
全員同じ部屋.
身代金は人に応じて違う
という事実.
次々と解放される人がいたり,
あるいは射殺される人もいたり.
果たして自分は生きて
ここから帰れるのか.
あの人はどうなったのか.
極悪な中にあって,
それでも人のために気遣う
アメリカ人ジャーナリストの
フォーリー.
ISの最大の敵である
アメリカ.
その環境の中にあって
気丈に振る舞う
彼の精神や気遣いに
心が打たれた.

彼はジャーナリストだけに
自国と自分の置かれた
状況を冷静にとらえている.
そんな冷静な対応が
あの状況で果たして
できるものなのか.

その場に居たら
気が狂いそうだ.
心が折れて病んでしまう.
泣き叫びたい状況だ.

一体国籍とは何なのか.
個人の命は国籍で
決まるのか.
国籍はその人を
表してはいない.
その一部に過ぎない.
それで人生が決まっていく.
なんとも切ないし,
やりきれない.

目を覆いたくなるような光景.
悲惨で過酷な拷問.憎悪.
あの劣悪な環境.
処刑されるシーンでは
目を覆いたくなる.
息が詰まるが
決して目をそらさずに
事実を捉えることが必要だ.

憎悪が憎悪を生み,
負の連鎖が続く.
それでは
いつまでも終わらない.

破格な身代金を
政府の支援もなく
如何にして家族は集めたか.
融資も限界がある.
その一方では
結局その資金は
テロリストを
支援することとなり,
相いれない気持ちもわかる.

そもそも外務省の
海外安全ホームページにある,
いわゆる「レベル4」の
渡航自粛の地域に
行くということに
批判の声もある.

しかし,
現地を取材し,
その実情を報道したい
という気持ちもわかる.
実際にそうした人が
負うリスクというのが
良く表現されている作品だ.

誘拐され人質解放を条件に
身代金を要求側と,
それを受け入れる側.
双方を仲介する
身代金ビジネスも
当然のように
成り立っているのだろう.
コンサルタント業務の
ようななのだ.

本人がまだ生きているのか.
そして本当に当の本人なのか.
それを確認する必要がある.
そこで身内しか
絶対知らない質問を
交渉人を通して人質に
確認するシーンも
描かれている.
実話を基にした作品だけに
そうしたシーンを
用意していくれる.

日常という平穏が
どれほど大事で
貴重な時間なのか
身につまされる.

感謝しかない.

立場の違いから
発生するこの「正義」について,
公正に扱える万民の「正義」が
果たしてみつかるのか.

正しいことは,
目には目を.
さらなる憎しみの
連鎖を生んでしまう.

感情では
解決できないのだ.

投稿者プロフィール

天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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