これはヤラれた「ベイビーティース」

Baby teeth

オススメ度:★★★★☆(4.0)
理由:これは映画館でもらったカード.
アニメではなく実写だ.
王道のような恋愛単純作品
だと思ったら,そうでもない.
なんとも切ない.
静かな作品であるが
魅力溢れた仕上がりだ.

オーストラリアのドラマ映画.
劇場のシーンを映画化しただけに,
細かい章立てが気になる.

「ストーリーオブマイライフ/わたしの若草物語」
あの優しい病弱な三女役.
エリザ・スカンレンが主役だ.
主題は,乳歯はいつか生え変わる.
彼女は永久歯に生え変わる前に
命が途絶える.そんな体験.

互いに違う闇の世界に身を置く2人.
ミラは16歳,恐らく末期の白血病患者なのか.
アウトローのモーゼスは薬の売人で26歳.
末期患者の彼女に不良青年.
お決まりの古典的なラブストーリかと
思いしや,全く新鮮.
娘のことで情緒不安定の母親と,
精神科医でその妻との生活で
ストレスを抱えてている父親.

映像の鮮やかさに加えて音楽もいい.
本作品は邦画にはない魅力がある.
邦画によくある
「お涙ちょうだいもの」
ではないのだ.
いきなり唐突な出だしで
どんな展開になるのかと
思ったが,
観終われば素晴らしい内容.

ミラの周辺には両親すらも
彼女を特別に扱っている.
しかしモーゼスは彼女を
決して特別扱いをしない.
というか気づいていない.
いや,気づいても
自分には関係ないのだ多分.
それが彼女にとっては
とても新鮮なのだろう.
無邪気の中で,
自身の残りの命も
知っている.
輝いている彼女.
微妙なミラの心の表現が
散りばめられていてる.

家族,恋愛,気遣い.
意見の相違.喧嘩争い….
その人間関係のタッチが
実に絶妙だ.

人生は命が短い長いではない.
その内容,中身の濃さだ.
凝縮した生き方.
時間がないからこそ,
濃い経験ができたのかも
しれません.
普通の生き方とは何か.
普通ではない生き方とは何か.
彼がモーゼスだけに,
とんでもない濃い時間に
なったのだろう.
超ワルの救いようのない
モーゼスだからこそだ.

彼の存在でミラ本人だけでなく
両親も変わっていく.
彼女にとっては
最良の選択でも
親の立場で,
あの選択をしたかと思うと
複雑・微妙だ.
受け入れ難い現実が
どうにも切なくて痛い.

でも
限られた命だからこそ
儚いのも確か.
確実に終わりに
向かっているからこそ
美しい.

本来使わなくても
いい人がドラッグを使い,
本来使わないければ
ならない人が使いたくないという.
欲しいものは違っている.
本当に欲しいものとは,
本当はその先に存在するんだ.

本当に偶然の出会い.
そして別れ.
その瞬間.瞬間が
たまらなく大事な時間.

エンドロールに
聴こえる波の音.
あの思い出.

少しネタバレになるが,
父親とのデジカメ撮影シーン.
彼女がお願いするシーンが泣ける.
わかっているだけに哀しい.

人の記憶は
いつまでもあの
さざなみのように
美しくありたい.

ベビーティーズ

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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