叔父の農場で実際に撮られた作品「私の叔父さん」

私の叔父さん

オススメ度:★★★★☆(4.0)
理由:まずは公式サイトを観てほしい.
そこで知ったのだが,
あの主演の2人,
姪と叔父は実の親戚関係,
つまりは
本当に姪と叔父の関係なのだ.
主演の姪は,若手女優.
しかし叔父は
全くの素人で演技未経験.
そしてあの農場,
主演の叔父が所有する
実際の農場らしいのだ.
それには驚きだ.
そんな素朴な本作が,
各国で数多くの国際賞を
受賞したのだから,
観る価値は十分ある.

デンマークの田舎.
両親を亡くし叔父に
育たられた年頃の娘のクリス.
娘と叔父で家業の酪農を支える.
叔父は病なのか下肢不自由な状態.
そんな叔父の世話をする娘は,
何の文句も言わず
日常を過ごしている.

彼女は叔父の世話,酪農,
食事の支度,買い物.
その型にはまったような
毎日の生活が繰り返される.

そんな彼女には
将来の夢があった.
それは獣医になる夢.
その夢を諦めたわけではなく,
関連する本を夜のくつろいでいる
合間とか,
あるいは酪農の仕事の
合間にも読み続けている.

教会に行けば,
格好いい青年から
声を掛けられる.

そうした彼女の夢や恋に
気づいた叔父さは,
姪の夢や恋を
叶えてもらいたいと願う.

姪は叔父のことを想い,
叔父もまた姪を気遣う.
しかし現実は
そんなにうまく行かない.
それが現実なんだ.

うまく行かないことだらけ.

TVから流れるニュースは
孤立したとも見て取れる
酪農の田舎家庭にとって,
社会と繋がっている唯一の
パイプのようにも見える.

食事を摂りながら
TVを点ければ,
北朝鮮の核や
欧州の難民問題などが流れる.
毎日の情景に取り込まれる
そのネガティブなニュース.
彼女と叔父に
起こっている問題が
それと対比されて
描かれており興味深い.

それは事情があって
彼女が我慢しているわけでもない.
無理やり強いられてるのでもない.
彼女は実は
それを選択しているようにも見える

コンフォートゾーンから
出るのは
お互いにリスクが伴う.

大事な時期.
二度と戻らない思春期のこの時を,
こうして使ってしまって
果たして良いのか.

いずれは
この生活にピリオドを
つける時がやってくる.
守りたいものはなんだろうか.

有限な人生.
どう使うかは自由だ.

シンプルなまでの
沈黙と日常の田舎風景.
その沈黙の中に
日常を垣間見ることが
できる見事な表現.
さほど会話をしない姪と叔父.
まさに映画らしい表現方法.

姪のデートに気遣い,
叔父さんがヘアアイロンを
購入する…
ほのぼのとした
日常の買い物.

そして
あっけない日常での,
いきなりの幕切れ.

普段の生活,
叔父との暮らし
その今の生活を
一番大事にするという
彼女の選択.

叔父も叔父で,
姪に迷惑を
掛けたくない
気持ちがよく伝わる.
そして特に姪を
束縛しようとしない.

むしろ
彼女自身の行動に
委ねている.

失いかけていた想い
受け継がれてきた
家族愛なのかな.

こうした作品を
映画館で観られ
本当に良かった.

投稿者プロフィール

天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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