思わず惹き込まれ号泣「ヤクザと家族 The Family」

ヤクザと家族

オススメ度:★★★★★(4.6)
理由:従来のヤクザ映画ではない.
決してヤクザが正義ではないが,
感情移入できるところが多い.
失われた義理と人情の世界に
とても共感できる.

昭和時代に流行った
いわゆるチャンバラ,
暴力的シーン,
格闘が行われる,
清水次郎長的な
ヤクザ映画ではない.
それら従来の作品は
自分には遠い存在で,
到底触れることのない世界.
だからこそ
感情移入しにくいし,
第三者の視線で
観ることができる.
ところが本作は
非常に近い立場で
鑑賞することができる.

綾野剛が演じる不良青年.
たまたま居合わせた店で
暴力団組長を助けたことが
キッカケでヤクザになる.
組長を演ずるのは舘ひろし.
組長と親子の酒坏を交わす.

次第に頭角を現わし若頭へ
出世するも,対立する組員を
刺し刑務所行となる.
服役を終えて出所したら,
すでに時代はヤクザにとって
住みにくい世の中になっていた.
それは平成4年施行された
暴力団対策法や県市町村の
暴力団排除条例だ.
これにより暴力団員には
銀行口座はおろか,
携帯電話も持てない.

本作は,
暴力団が活発だった頃から
衰退するまでの20年間が
描かれている.
ヤクザも時代とともに
栄枯盛衰なのだ.

覚醒剤を憎む気持ちがある.
それは父がそのせいで
亡くなったからだ.
そういう意味ではちょいワル.
彼が根っからのワルでは
ないからこそ,
共感するのかもしれません.

行き場のない天涯孤独な青年が,
ヤクザの親分の
懐温かい気持ちに触れ,
親分に惚れる気持ちも
分からなくもない.

お金ではない.
気持ちだ.
義理と人情の世界が
ヤクザの世界なのだ.

ヤクザにとって
住みにくくなったために,
そこから足を洗い,
堅気となって生きようと
決心するも,
ヤクザから足を洗っても
執行猶予のようなものが
彼らを苦しめることになる.
それでも足を洗う
ということは彼らにとって
痛みが伴うことになる.
まっとうに生きようと
すればするほど,
法で縛られて生きられない
という社会矛盾が生じている.

藤井道人監督といえば
「新聞記者」.
それと同様に社会問題を
鋭く描く作品でもある.
反社会的な集団ヤクザ.
しかしそこには愛が
溢れている.
義理と人情の世界でもある.
暴力団を是認する
訳ではないが,
決して許されないことも
あろうが共感する部分もある.

足を洗ったにも関わらず
容赦なく過去を暴く
SNSの存在.
過去の恋愛や
やり直した現在にも
たしかに過去は消すことは
出来ない.
それでは赦してもらえないのか.
校正しても駄目なのか.
そしてやり直したい想いも
一瞬にして過去が暴露された
瞬間に容赦なく
小さな幸せが壊れていく.

それが時に理不尽な結果を招く.
それがとても切ない.切なすぎる.

会わなきゃ良かった.
出会わなければ良かった.
その気持がよくわかる.
どちらの立場もよく分かる.
だから辛い.

プラント工場からの煙突,
アーケード街が
シャッター通りに
様変わりしていく様.
ネットの噂,拡がりの怖さ.

それにしても主演の綾野剛,
あの20年間の変遷を
個人の人生を
投影しつつ見事に
演じ切るあたりが凄い役者だ.

アナキン・スカイウォーカーや
ジョーカーを観るように
ダークサイドに
引き込まれる感覚が
たまらなく凄い作品だ.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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