今あるものを捨て大事なものを集める…それが映画の編集だ『映画大好きポンポさん』

ポンポさん

オススメ度:★★★★☆(4.4)
理由:創作とはこういうことだったのか…うーんと唸ってしまう.こ
れは凄い.
洗練された90分.
余分な部分を切り捨てて研ぎ澄ませるとはこういうことか.
選ぶということは大事なモノ以外はすべて捨てるという作業…それが編集.
刺さりました.

軽いノリのタイトルからは,魅力というものが微塵も感じられない.
そして,あの女のキャラ,この画風….
この作品を観ようという気がしなかった.
『アフリカン・カンフー・ナチス』を見たばかりだったので,ここでまたC級映画を観る気にはなれなかった.

しかし,意外にも皆さんの評判がいいので,
観に行くことに.
それは…全く良い意味で予想を反し,
想定もし得ないクリエイティブの高い作品だった.
原作は,杉谷庄吾【人間プラモ】の漫画だという.
映画作りということが本作のメインである.
上映時間が2時間を超える長い映画が嫌いという彼女は天才プロデューサーのジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネットこと通称ポンポさん.
彼女の人の見る目は半端ない.
そこに映画好きの万年製作アシスタントの根暗のジーン.
この冴えない根暗がいいらしい.
幸せな明るい人ではいい映画が創れない.
根暗でどちらかといえば病んでいる方が,
いい作品ができるとポンポさんは見抜く.
わずか15秒のCMに自分の魂を入れる楽しさを知ったジーン.
CMに高い評価がついた彼に,初監督のオファーが….

結構,ポンポさんの発言に重みがある.

そしてジーンも撮りたいシーンを追加するとのことで,
一旦クランクアップしたのに,再度招集するところや,
追加シーンで追加の融資を工面するという銀行とのやりとり,
そして,
個人個人の心の動きなど,
とにかく,あの絵柄からは想定できないほどに表現がリアル.
それでいて話の流れも,
くどくなく洗練されて描かれている.

特に圧巻なのが,映像の編集作業.
どれも大事でそれぞれに想いのあるシーンの連続.
メイキング映像,制作の舞台裏.
スタジオで延々と作業する姿を
以前NHKのドキュメンタリーで
エヴァンの庵野監督の取材で
見たことがある.
そんな編集の面白さ,
いや難しさを
存分に与えてくれる作品に違いない.

監督の編集次第で
同じシーンでも
全く別の印象になってしまうのが
よくわかる.

何かを掴むためには,
今持っているものを捨てなければならない.
この面白さは,
限られた映画作品という時間の中で物語を凝縮することだ.
間延びしない.
どれも大事なシーン,
心に残るシーンでも,
それを削り落としてこそ,
洗練されたシャープなエッジの効いた作品に仕上がっていくのだ.

庵野監督,
ノーラン監督,
天才と奇人変人は紙一重.

心に残る名作というのは,
こうやって創られていくものなのかと思える.
そして,
この作品もぴったり90分.
無駄なところが一切無い.
テンポよくししてシンプルな作品だ.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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