社会の歪が生む「いじめ」そして人を慮る純粋な恋愛に脱帽「少年の君」

少年の君(1)

オススメ度:★★★★☆(4.3)
理由:中国の激しい受験競争.
一次試験,二次試験などが無い
6月に行われる2日間の
一発勝負の「高考」.
そんな高校での「いじめ」が
テーマになっている.
その中で知り合う立場の違う
少女と少年.
何の接点もない二人が
ある出来事をキッカケに
知り合う.
かなり濃厚な恋愛作品だ.

恵まれない環境の中で
どう生き延びるか.
その背景は根深い.
一見「いじめ問題」に焦点を
当てながらも,
社会の歪・社会問題.
相手を慮るいう「愛する深さ」を
感じる.
そして涙を流しながら
語ることの重さ,
涙で語る会話が心に沁みる.
後半,少し拙速で飛ばした
感じではあるが,
それでも胸が苦しくなる
展開で久々に魂が洗われた.

2019年の作品,
アカデミー賞の国際長編映画賞に
ノミネート,東野圭吾の
『容疑者Xの献身』『白夜行』『告白』の
パクリ疑惑で論争にもなっている
ようでしたが,そんなのは
映画鑑賞には問題ありません.

中国で閲覧禁止?となった
2019年に観た「象は静かに座っている
これには不平等な社会の中で
「いじめ」も描かれている.
そうした社会問題が良く分かる.

本作には,
中国の受験事情を知らないと
理解が深まらないかもしれない.
教育はわが国よりも
中国の方が学歴社会.
例えば公務員になるのでさえ,
学歴が無いと成れないのが中国.
日本では大卒以外でも高卒,
短大卒でも成れる.
全国統一入学試験(通称「高考」)
教育は人の運命をも変える.
教育を受ける権利は
平等ではない.
戸籍は都市戸籍と農村戸籍に別れ,
今は改定・改善はされているものの依然,
農民工が統一戸籍を取得するには
依然として厳しい.
(ちなみに彼女が受験したのは2011年)

去年の名古屋大の研究室に
居た中国の修士留学生を思い出す.
彼女は通っていた高校では,
試験が終わる度に,
成績ごとに席替えをするという.

少しネタバレになるが,
本作にも,その席替えの場面があった.
男女交際も駄目.勉強が中心….

学校生活,家庭問題,友人関係,
それらが複雑なストレスとなっている.
そんな背景に「いじめ」が
あるのかもしれない.
弱者に対して攻撃する.
それでも耐え忍び,とにかく執拗な
「いじめ」に耐えに耐え,
「高考」で受かることだ.
そうすればバラ色の人生が
待っているのだ.

お互いに貧しい環境下で
育ちながら,片方が成績優秀な
高校生,もう一方は母親に
捨てられた不良少年.
互いに接点のない二人.
そんな二人がある事件から
知り合う.
立場は違うが,
次第に惹き寄せられていく.
そんな展開と高校での「
いじめ」が並行して
展開していく.

二人乗りのバイク,
互いに髪を刈るシーンが印象深い.
高校では一切笑顔を見せない彼女が
彼の前では素直に見せる.
これは主演の周冬雨と易烊千玺の二人が
実に素晴らしい演技.
そして脚本と映像,
エンドロールの音楽.
どれをとっても良かった.

最後に
This used to be our playground.

少年の君(2)

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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