ラストシーン!これぞ映画の醍醐味「さがす」

さがす

オススメ度:★★★★★(4.5)
理由:凄まじく,
重くのしかかる骨太作品だ.
これは日本版『パラサイト』か.
行方不明の父親を探すうちに,
次第に探すのが怖くなる.
見たくないものまで見えてくる.
善良な人の心の闇,
葛藤に漬け込むような異常者.
スクリーンを観ている我々を
一体どこに誘うのか.
巧みなストーリー展開.

優れた作品は
何せ登場人物が少ない.
感情や心の動き,
魂が揺さぶられる感覚.
演技が半端なく,本気度が
スクリーン越しで
こちらまで伝わる.

さがす,パンフレット

映画パンフレットを
購入することはめったに無いが,
これは買い.
一体誰が誰を探しているのか.
大坂ミナミ・西成あたりを
舞台に展開する.
佐藤二朗と伊東蒼が親子として共演.
そして清水尋也演じるワル.
このワルの挙動,頭が本当に
ぶっ飛んでいる.
この3人が偶然なのか,
徐々に内容が解き明かされいく
謎解きの感覚.
この脚本は,
まさに映画を制作するために
出来た作品だ.

父親は娘を想い.また,
娘はそんな父を想う.
娘を演じる伊藤蒼.
この素直な心,
純粋で真っ直ぐな性格,
竹を割ったような言動が
関西弁で出るところもいい.

もちろん主演の
父を演じる佐藤二朗.
これほど,ピッタリ役な人もいない.
もの凄く妻や娘思いで素直.
それでいて言いたいことを
対人関係が苦手なタイプ.
一見,怠惰な生活を
送っているように見えて,
実はこんな伏線があったとは….

ぐうたらな生活を
しているように見えた父,
その父親が突然失踪する.
それを必死に探す娘.
その一方で,謎の青年.

難病の母,それぞれの事情,
心の闇.闇は深く,
そして青暗い.

時間軸が揺れながら
観客を誘っていく映像.
次第に明らかになっていく真相.
不可解な行動は,
そのせいだったのか.

何故そのような行動を
起こす必要があったのか.
どんな心境で
そんなことをしたのか.

愛してやまない父娘との絆.
そして愛している妻
だからこそ,
その気持ちを知ると,
そうしたい気持ちは
わからなくもない.

ワーキングプアーに
陥る生活の中で,
正直者は馬鹿をみるのか.

生きること,そして死ぬこと.
尊厳死と安楽死の議論,
欲望と不安.涙と笑い,
息が詰まるような,
胸が圧迫されるような
この感覚.人間の逞しさ,
強さ,そして弱さ.
思いやりとその反対の醜さ.
異常としか思えない思想,
それら全てが全部織り込まれて
いるような作品でした.
とにかく脚本がいい,
時間軸がとても
良く工夫されている.

少しネタバレになるが,
エンドロール直前の
父娘の卓球ラリー.
ピンポン玉の弾ける音が
劇場内に響き渡る.
語りがなんとも,
心を揺さぶられた.

家族で卓球…
やってみたくなった.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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