まるで大人のグリム童話「ナイトメア・アリー」

ナイトメア・アリー

オススメ度:★★★★☆(4.3)
理由:こりゃ凄い.
悶々とするこの感覚.
観終えた後には
一週間は尾を引く.
人とは,なんと…
皮肉なものなのか.
そうした生きものなのか.
何とも重いテーマで
身に詰まされる.

父親に対する憎悪.
一体過去どんなことが
あったんだろう.
詐欺は騙す側と騙される側.
その関係が複雑だ.
心理描写は見事だ.

俺はこんなもんじゃない.
ここで終わる人物ではない.
もっと上をいく.
さらに上を目指す.
ビジネスで成功をする.

やがて主人公はどんどん
登っていく.そして
頂点を極めると,
有頂天になる,
そこには奢り高ぶりが
見え隠れする.

すると,その階段を
踏み外していく.
せっかく
どん底から
這い上がって,
また転落して,
どん底に
落ちていくとは.

それは因果応報なのか.
それが何とも切ない.
そして何とも,
もどかしい.

ある程度のところで
身を引くことの大切さ.

人は自分のことには
気づかない.人からの
忠告も耳に入らない.
危険を気づかせて
くれるメッセージが
何度もあったのに,
それに気づかない.

そんなことが,
一杯詰まった自省的な
メッセージ性の
ある作品だ.

行き詰まるような悲劇.

本作の監督の
ギレルモ・デル・トロ監督
といえば,2018年に
観たアカデミー賞受賞の
「シェイプ・オブ・ウォーター」
https://ama3.jp/archives/164

本作は,
「シェイプ・オブ・ウォーター」
のようなファンタスティックな
超常現象もなく,
とても泥臭いダークな
サスペンススリラーだ.

両作品は共通する点は
ダークな部分.
それは全く違った
見方もできる.

ダークサイトの
心の動きを
見事にまで描いている.

過去に傷を持つスタン.
その役を
ブラッドリー・クーパーが
務める.
舞台は世界恐慌の
1930年後半から40年代.
ちょうど「怒りの葡萄」
の時代だ.世界は
混沌としている時代だ.

荒れ果てた
怪しい見世物小屋.
そこで読心術を学び,
それを糧に次々と
成功を収めていくスタン.
闇の中に光が差し
込んできた一瞬.
すべて順調な
滑り出しだ.

やがて,その奢りから
破局を迎える.
その恐ろしいラストは
余りに衝撃的だ.
本当に息が詰まる.
それにしても,
ラストシーン.
わかっていながら
なぜ,そんなことを
するのか.不幸の
どん底となると最初
からわかっていながら,
自らその扉を開けて
そこに飛び込むとは.
何とも悲劇的な結末だ.

そこに行き着くことが
あたかも目的であったかの
ような生き様.
それは絶望.

人間の闇の部分を
ここまで追求して
描くという試み,
なんとも重厚な
相当の見応えだった.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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