1970年から73年の間で制作された長編戦争スペクタクル。第一部、第二部、そして今回は第三部(完結編)全部で約9時間半。見応えがある。見てよかったと真に思える作品です。You tube一部、二部、三部と楽しめるので、映画館でなくても、是非触れて欲しいと思います。どのような形で戦争へと拡大したか、財閥と軍隊との関係、冷静に統計分析をせず、精神の問題として姿勢にのみ依存する体制。都合の悪いことには目を伏せて、厳しく取り締まる。蛮行は集団心理と密接な繋がりがあり、冷静な対応ができなくなるのだ。人種や民族に優劣などないのに、本人の環境と努力で決まるのに、生まれた制度や国だけで優劣をつけてしまう風潮や世論も怖い。洗脳されてしまうのか
さて、本作品第三部は盧溝橋事件からはじまたt日中戦争を皮切りに1937年の南京大虐殺から1939年のノモンハン事件までを描いた作品がこの第三部完結編です。特にノモンハン事件での映像はソ連軍の協力で撮影されたようで、さすが実践用の戦車は圧巻でした。架空の財閥である伍代財閥。その次女の順子役を演ずる吉永小百合はやはり美人です。美しい。その伴侶というのが、労働運動で赤と言われ続けた耕平演ずる山本圭。本人同士で承認者は兄の伍代俊介を演ずる北大路欣也。極秘結婚というのも衝撃的ですが、伍代当主である父親が意外にも冷静な対応だけに、さすがに経営者というのは懐が広いなぁ。反対だけど、感情的にならず、その事実であれば「家を出てけ」という、極自然な振る舞いに、少し感心しました。
旦那の耕平はその後、憲兵隊に捕まる。そして満州へと出兵になる。そこで日本軍の非道な実態を目の当たりにしながらも、身を守り続ける。その生き方もいい。伍代俊介も、免れていたが、憲兵隊に捕まって、最終的には戦場へ駆り出されていく。そしてあの「ノモンハン」へと向かう。ノモンハン事件は、当時の満州国とモンゴル間の国境線をめぐる紛争で、結果としては圧倒的な火砲でソ連軍が勝利した事件である。
当初は4部作として構想されながらも諸所の事情で3部にて完結となった戦争超大作。
小説の方は当初は東京裁判による伍代家の破滅まで描いた四部作を予定していたが、豪華キャスト・本格的な戦闘シーン・海外ロケと日本の映画史上でも屈指の大作であったため、当時の日活の経営悪化もあり結果的に予算が続かず、第三部で完結を強いられたようだ。その後の日活の衰退は時代の変遷なのかも知れない。惜しい。4部も作品を作ってほしかった。
近代戦争を知るうえで、戦争拡大にどのように進んでいったのか、そしてそうした戦争という渦の中で人間関係がどうだったのか。本当に凄い作品だ。★★★★★
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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