振り返ることで実現できずに永遠に思い出に変わる「燃ゆる女の肖像」

肖像2

オススメ度:★★★★★(4.6)
理由:これは凄い,
魂が揺さぶられて,
余韻が残る.
ギリシア神話
「オルフェウスと
エウリュディケ」の
物語は,奥が深い.
こと座になったオフフェウス.
あの時,なぜ不安になって,
振り返ってしまったのか.
一生後悔する思い.

消え去ることのできない
過去の失敗.
不安になって
どうしようもない時,
振り返ることの意味.
色々考えさせられる.

そして,
ヴィヴァルディの
『四季』の『夏』演奏
から想像する風景.
美しい作品だ.

永遠に消えることのない
炎を感じる.

振り返ること.
それは作品ポスターの
肖像の「肖」の字にも
現れている.
鏡に映し出されるような演出.
それに気づくとなんとも
奥深い作品だとつくづく思う.

切なさ,儚さ,やるせなさ,葛藤….
それでも生きていくことが
求められた「こたえ」ではないかろうか.

男女という異性を超えた世界.
同性愛は男性同士の作品が
多いように思う.
ムーンライト
君の名前で僕を呼んで
ボヘミアン・ラプソディ

本作品は女性同士といえば
女王陛下のお気に入り
ただし,恋愛がテーマではない.
惹き込まれるような繊細なタッチ.

途中で身投げするんじゃないか?
と思わせるような展開.

女中の本人が望んでいないから…
ということからの中絶.

好き,愛しているというレベルには,
もはや異性とか同性とかは
相入れないものなのだろう.
18世紀男尊女卑,女性が
抑圧された時代だ.
作品に男性がほとんど
登場しなくても,
この時代のジェンダーがわかる.
貴族の女性はお見合いの時代.
当然お見合い写真というか,
カメラ撮影のない時代だ.
お見合いには貴族は
肖像画を描いていたという.

島の年頃の娘.結婚を拒んで
いたため,
肖像画を描かせない彼女.
そんな彼女に忍び寄る
女流画家.
今で言うところの,
盗撮ならぬ,
表情を盗んで肖像画を
描くという画家.
盗撮ならぬ隠れクロッキーからの
肖像画は,描かれた娘本人からすれば,
不本意で自分を描いていないと主張する.
カッとなった女流画家.
もう一度彼女を今度はモデル
として盗撮ではなく,
ちゃんと描く.
キャンバス越しに互いに
無見つめ合っているうちに,
描く描かれるうちに,
そして,本のこと,音楽のこと,
話し合っていくうちに
恋に落ちていく二人.
たった5日の恋.

虚しい.寂しい.
でも深い悲しみ.逢いたい,
見つめたい,

でもあえて見ないという
心境に胸が痛む.

美しい岸壁,海岸,海.
その風景の美しさ.そして,
人の表情と感情.

登場人物は,貴族の娘,
その母,女中,
そして雇われた女流画家の4名.
でもその大半は画家と娘.
暖炉,ロウソクに照らされる
神秘的な情景.

素晴らしい作品は,
解説などなくとも,
どういった状況に陥っているのか,
作品を観ているうちに
察することができるのが凄い.

自由に外を散歩することすら
許されない生活.
お金持ちでも,
不自由な暮らしは決して
幸せではない.
そして,
女性は結婚を起点に
生まれ変わるのだろうか.
太くたくましく,
それでいて繊細な姿を
貴婦人となった彼女の涙に観た.

肖像1

投稿者プロフィール

天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」
ブログでは日々の気づきを中心に書いている。
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