オススメ度:★★★★☆(4.4)
理由;前科者の過去を
偽りの司祭になりすませた
青年の運命.
実話から生まれた衝撃作.
「ブレスレス」に続く
骨太作品だ.
2020年アカデミー賞の
国際長編映画賞は
あの「パラサイト」に
輝いたのだが,
本作品はポーランド代表作として
ノミネートを果たした.
それだけにやはり
素晴らしい内容だった.
魂が震えた作品だ.
「パラサイト」も
本作品もまた
「レ・ミゼラブル」も
「なりすまし」の人生.
しかし,そうしたことは,
心の奥底に潜在意識の中に
誰しも眠っているのではないか.
少なくとも彼の正義感は
正しいように思える
『実話から生まれた衝撃作』と
謳うだけあって,偽司祭事件は
ここポーランドでは
よくある事件らしい.
本作品は一つの実話に
基づくものではなく,
複数の実話を組み合わせ
脚本した作品のようだ.
犯罪心理の専門家ではないので,
主人公ダニエルの神父になりたい,とか
生まれ変わりたいという
気持ちが少ししか感じられない.
でも
その悪人と善人が
混ざっている心の中の表現を
よく表していることは理解できる.
なんとも言えない気持ちにさせる.
人は生きていくうえで,
そうした気持ちにもなり得るし,
その時どう立ち振る舞うかに
よって聖者にも犯罪者にもなり
得ると思う.
少年院の仮釈放中に
たとえ勘違いされたとは言え,
前科者は聖職に就けない.
そうと知りながらも
その村で司祭になりすまし,
次第に村人から信頼を得るのは,
最初は悪いと思いつつも,
元々の素は善人だった
のかもしれない.
やり直したい気持ちから
本当のことが言えず,
結局は
『人殺しの私は,嘘を重ねながら奇跡を待ち続ける』
彼は,司祭という地位を借りて,
独裁者のような振る舞いを
したわけでもない.
村人のために真摯に向き合う.
本当の善人のような振る舞い.
多分人は,
善悪2つのものを
持ち備えているのだ.
必ずしも,
司祭という聖職者=聖者ではない.
前科者でありながら,
あれだけピュアな気持ちで
村人に接し,自分のことを
素直に表現する,
彼自身は聖者ではないにせよ,
善良な村人たちといえども,
ダークな部分も少なからず
持っている.
そう思うと,
前科者の彼が善人に見え,
逆に村人たちが悪人にも
見えたりもする.
この描写,描き方に感銘する.
赦しとは何を持って
赦してもらえるか.
神が赦しても,
その人が憎しみを忘れない.
社会が赦さない.
忘れることが赦すことには
結果としてはならない.
過去のことは無かったことには
ならないのだ.
事実は残る.
その事実を心がどう捉えるか.
人は未熟がゆえに悩む.
宗教の中にある矛盾を
鋭く突いた作品で,
またこの題名,いい邦題だ.
人と接して,人は影響しあう.
善と悪が表裏一体となしている.
ある時は聖人,
ある時は以前の暴力を
振るう私としての存在.
人生には「もしも…」は無いが,
仮にあったとしたら,
やはり違う自分を
演じてみたいと思うのも
わかる気がする.
どこかにそんな願望のある
自分に気づいた.
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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