自分のためではなく,人のために見せたい星がある「えんとつ町のプペル」

オススメ度:★★★★☆(3.9)
理由:集団心理.社会学.
伏線がいっぱい詰まっていて
とても考えさせられる作品.
共感して泣ける.
ただ,もう少し伏線を膨らませて
描いて欲しいと感じた次第.

決して悪いわけではないが,
キングコング西野さんに期待する
ところが大きいだけに,
ついつい,もっともっと要求して
しまいがちだ.感動をありがとう.

ご存知キングコング西野さんの
絵本が原作の作品.
自分これまでの過去.
そして思い.それと重なる.
だから泣ける.
でも凄く感情が湧いてくる
ということはなかったが,
見応えは確かにある,
じわじわと湧いてくるのだ.

星を見れるのは,
自分を信じて欲しいという
ことはなくて,
他人(ひと)に
星があることを
知ってもらいたい,
だから是非見て欲しい.
という
人を思いやる気持ちからだ.

自分を認めてもらいたい
と思うのは自我でありエゴ.
人のために
何かをすることとは
次元が違う.
まさに
キングコング西野さんの考え.
その考え方には惚れ込んでしまう.
やはり彼は天才だ.

絵本の内容は
いわゆる短編.
これををここまでの映画にまで
仕上げるには,大変な作業だった
に違いない.
ほっこりする心温まるストーリー.
特に子どもも安心して観られる内容.
映像も美しい.

炭鉱のトロッコの
アクティブな映像どことなく,
見覚えがある.
そうだ.
インドの少年と
インディ・ジョーンズ.
あの「魔宮の伝説」の
トロッコシーンを思い出す.

絵本のクオリティが
あまりに高いので,
その分,
映画化に期待するところが
より高くなる.
涙あり,笑いあり,協働あり,
共感もあり,価値ある作品では
あるが,それ以上に期待する
ところが大きい.
だから評価も辛口に
なるのかもしれません.

この作品から
「ヨシよしやろう!」と
はじめの一歩や
勇気などを得た方も多いだろう.

社会環境,登場人物の背景など,
なぜなぜ…がいっぱい詰まっている.

ポリスとレジスタンス.
安定と不安定.規制と自由.

無知だからこそ,
そのことで恐怖に繋がり,
だからこそ,
宗教やスピリチュアルに
それを求める大衆.
そして結果として人に騙される.

鑑賞する前に
「えんとつ町のプペルができるまで展」を
観た.キングコング西野さんの
世界観が素晴らしい.
映画にはこの内容をさらに
織り込んだほうがもっと
面白みが出るように思えた.
例えば
「ブルーノが何故星の話を信じたのか」
に登場する「龍の鱗」の話とか.
時計の文字盤に”12”がない秘密
とか.ドロシーとクレアの関係.
など.

ルビッチのお父さんは
どのように亡くなったのか.
そしてルビッチが,
なぜそれを隠していたのか.
あの姉妹.ドロシーとクレア.
そして母,もう少し説明が
欲しいとも感じた.

長いものに巻かれる風潮.
裸の王様.民衆という同調の
圧力だったり,
出る杭は打たれる的な….
そして押しつぶさえれて
「諦め」になる.
したいことすら口にできない風潮.
そして万一成功した,
好きなことをして
成功した人をやっかむ.

これまで少しはやってみた,
でも諦めた.挫折した.どうせ無理…と.
できない理由,やる前から理屈を並べて立てる.

そんな中にあって,
プペルやルビッチ,お父さんも…
逆境に向き合う姿勢に
勇気を貰える.

「分からないことに蓋をしたままじゃ、先に進めない」
「信じて、信じて、世界を変えろ」
「誰かみたのかよ!」
ルビッチ,プペル,父母…の言葉.

ヨシ!もう一度やってみよう.
「諦めない」にフォーカスして
見ようと思える
勇気をいただける作品だ.

主役の芦田愛菜は凄い.
オリラジの藤森の早口には感嘆!
父のナレーション.
クライマックスの語りがいい.
エンドロールの主題歌が
心地よく聞こえた.

後は,期限つき貨幣の考え方だ.
消えてしまうお金の考え方は面白い.
腐ってしまうお金.
お金は道具ではある.
腐ってしまう貨幣の流通は.
徹底的に消費や投資に回わる.
貯蓄のインセンティブが
働かない状態だ.
その時,経済はどうなるんだろう.
少しマクロ経済を復習したくなった.

国民生産,消費,政府支出,
輸出入.税金に貯蓄…
Y = C + I + G + EX – IM
Y = C + T + S
思わず貯蓄投資バランスの式
など考えてしまった.

また,「経済学の10大原理」(マンキュー)
などだ,

マクロ経済の勉強の題材としても,
この「時間とともに消えてしまう貨幣」は
非常に興味深い.

貨幣価値というのは,
現在価値が一番高く,
将来の価値は
持っているだけで下がる.
そうした利子率の考え方.
「腐るお金」は,
もっと極端に将来価値が下がり
やがては消えていくという発想.
面白い.
消費性向を高め貯蓄ではなく,
投資に回すことになるはずだ.
でも実際には
そう単純ではなさそうである.

でも所詮
お金は道具に過ぎない.

「鎖国」として煙に覆われた
町では,みんなが,
やる気が無いようにも見えない.
確かに王様は飾りで.
傀儡王政のようではあるが,
人々が悪政に苦しんでいる
ようにも見えない.
反乱や暴動など,
運動が描かれていれば,
もう少し迫力が
あったかもしれない.

事始めには障壁はつきもの.
人を誹謗中傷したりする.
メゲることもあろうが,
結局は自分の意志次第.
勇気をもらえる.
あたり前なことが
出来ていなかった
自分に気づく.
そうだ,
上を向いて歩いて行こう.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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