原題「プランA」の方が分かりやすい「復讐者たち」

復讐者たち

オススメ度:★★★☆☆(3.0)
理由:「怒りはすべてを台無しにする」
しかし自分の大事な家族や
子どもたちが
理不尽にも殺されたとしたら,
喪失感とともに憎悪が膨らみ,
その復讐へと駆り出される
気持ちはわからなくもない.
非合法で裁きを下す気持ち.
過去に囚われずに,
今を生きるというのは,
口で言うのは易く,
実はそんなに簡単なことでは
ないのだ.

ナチスから迫害を受けた
ユダヤ人による復讐計画.
実話に基づいた作品.
1945年の敗戦直後のドイツ.

ユダヤ人のマックス.
収容される際に別れた妻子.
結局はナチスに生き埋めに
され殺された.奪われた悲壮感,
悔しさ,そして憎しみ.
それを知った彼は
ナチスだけでなく,
ドイツ人全員に対して復讐を
することを決意したのだった..

ユダヤ人の組織である
「ユダヤ旅団」は,
ナチスの残党を密かに次々と
殺戮を繰り返していく.
ユダヤ人大虐殺に
直接関与した者を
次々と殺していくのだ.
しかし彼らには目標があった.
パレスチナに安住の地を
求めてユダヤ人国家の建設を
目指している.

一方同じユダヤ人組織でも
「ナカム」ではドイツ人
600万人をターゲットに
無差別に復讐計画する.
「ユダヤ旅団」にとって
「ナカム」はユダヤ人国家建設の
障害となる.
したがって彼らとは敵対
することになる.

しかし建国された
「イスラエル」は
欧米の戦勝国が中心に
考え推し進めできた国家だ.
最初から定住していた
アラブ人には,まさに「寝耳に水」
の出来事だろう.
その後の中東戦争,イスラム…
対ナチスは対アラブと構図を
代えて今も戦いは続いている.
安息の日は遠い.

ユダヤ人とナチスに関わる作品としては.
「ジョジョ・ラビット」
「異端の鳥」
がある.

この復讐というのは
単にナチス×ユダヤといった
構図ではなく,
錯綜・複雑化する善悪.
つまりは,
すべてが善でも悪でもない.
双方を兼ね持つところに
複雑に入り乱れる.
それが返って話を
難しくしているし,
一枚岩ではない.
気持ちはわかる.
差別や偏見は環境の
周囲の影響も大きい
正気が消え去り,
異常の中に身を
置く意味は,
果たして人として
生きる意味が
あるのだろうか.
理不尽にも奪われた生活.
家族,憎悪とともに
喪失感も半端なものでは
ないはずだ.
理不尽に喘ぎながら
理性を保つのは
容易なことではない.

悪魔が入った袋,
その堪忍袋の紐を緩めた時,
「プランA」が実行される.
さて,その後どのように
展開していくのか.
後半は見どころも多い.

是々非々という
ニュートラルな
冷静沈着な意思が,
いつしか感情の
高まりから
憎悪が膨らみ
復讐心が拡大していく.

何の罪のない
子どもたちを
巻き添えにして
良いものか.

葛藤.正解はわからない.

ただ話は違うが,
心無い人達が,
ナチスドイツの
ユダヤ人虐殺を
茶化したりするのを
観るにつけ残念でならない.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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